Jin Nakamura log

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大晦日

今日になってやっと書き上げられ、ゴムでくくられた年賀状の束は郵便ポストの口に入らず、四苦八苦していると近くの郵便車で待機していたオジサンが見かねて直接引き取ってくれた。結局最後までいろんな人に世話になりっぱなしで、それでもなお様々な懸案をかかえたままで、あと数分後に新しい年を迎えようとしている。当たり前だが大晦日で全てがリセットされるわけでもないのだが、まあとりあえず“ひと区切り”というのも大事。深呼吸をしてまたスタートラインに立ちましょうか。そんなわけで皆さん良いお年を!

九谷ヌーボー

先日「LABEL match ART」の件を記したが、実は直前に同じ丸善の日本橋店で「九谷ヌーボー展」の開催が決まっている…いや決まってしまった(最近知ったの)と言った方がいいかも。場所と会期を検討中であることはもちろん知っていたがまさかココにフィックスされるとは思ってもいなかった。が、まあメイン作品は2009年から九谷に赴いたりして準備はできていたし、今後制作することになる他の付帯作品については時間的な問題をネガティブに考えず、今までとは違った制作スタイルを確立するチャンスととらえてみようと思っている。詳細はもう少し具体的になったら報告しますが、さて。すでに九谷のデコ盛り(青九谷とは別系譜のいっちんの伝統技法)職人さんにデザインをお渡しして、完成・納品済みであったブツが我が仕事場に一時滞在することに。お正月をいっしょに過ごしてくださいと企画元・風呂猫のキャトグラファー板東氏がわざわざ持ってきてくれたのです。実物は5月末の日本橋のお楽しみということで今回は後ろ姿のみチラっと。自分でデザインしといてなんですがホンモノはヤバイです。4方向から描いた平面デザインがほぼ完璧に3Dに再現されていて、やっぱり職人さんてすごすぎる!

LABEL match ART

オニが泣こうが笑おうが、気がつけば来年の展覧会予定は結構タイトになりつつある。詳細は仕事納めあたりまでに「information」ページにてログ扱いで公開予定。それぞれ楽しみな展覧会めじろ押しなのだが、中でも昨年あたりから少しづつ時間をかけて調整準備を続けている企画が「LABEL match ART」。6/1〜6/7 丸善・丸の内オアゾ店4Fギャラリーでの開催が正式決定した。NHKの「視点論点」や「徹子の部屋」にも取り上げられ出演もされているマッチラベル蒐集家・グラフィックデザイナーの加藤豊氏とのコラボ展。最近はすっかり出番の少なくなった(ほぼナイかも…)「燐寸」=「マッチ」。いうなればそのパッケージデザイン「古燐票」の魅力にグっとせまって、なおかつ僕がART化してしまおう(すでにやってはいるのですが)という企画。マッチラベルの魅力とその詳細については僕があらためて語るまでもなく加藤氏のリンクサイトをご覧いただければよいのだが、僕自身はあのパッケージ5×3cmの小宇宙に“原寸勝負”した職人(浮世絵師の系譜と言われている)たちの感性と技術に深く感動する。PCにせよコピー機にせよ拡大・縮小が当たり前の環境の僕らにはあの執着心はまねのできない領域となるが、ま、ソレハソレ。良いモノはよいので感性の部分だけでもどっぷりとハマらせていただく所存である。

余談だが僕の生まれた街の山奥にはその昔燐寸の原料にも使用されていた硫黄の鉱山があって、こどもの頃最寄りの鉄道駅にはいつも黄色い採掘物を満載した貨車が何両も繋がれていたのを覚えている。ホントのことをいうと僕は硫黄だけに限らないがこうした化学薬品系のニオイが少々ニガテだ。科学はすきだが化学はイマイチ。でも硫黄泉などの温泉は好き。マッチもラベルにはゾッコンだが摩って発火する時のニオイもこれまたニガテ(このニオイが好き!という人もいる)。結局けっこうワガママだ。

報告が少々遅れましたが、去る12/19(土)小布施町まちとしょテラソにての第2回目アーティストワークショップ・美場テラソ/立体系講座「ワイヤーマンをつくろう!」(彫刻家◎神林學)を紹介しておきましょう。なんと始動から2回目にして定員の20名のご参加をいただき満員御礼達成です! 初めての方、リピーターの方(中には2007年のハイウェイミュージアム・オブセコンテンポラリーからの方も)いらっしゃってホント有り難いかぎりです。今回も多年齢層でみっちり3時間、みなさんの集中力には感服です。答えのないモノを生み出していく緊張感と創造力ってやはりイイものですね。企画側のクリエーターもマジで刺激を受けるものなのです。今後も様々なジャンルのアーティストにかかわっていただきながら魅力的な講座を企画していきますので、未体験の方もどうぞお気軽にご参加ください。経験の有無や技術は一切問いません(なんか就職求人広告みたいだな…)ただアートやモノツリが好き(興味でもOK)な気持ちがあれば大丈夫!

さて、次回1/22◎クリアグラフ…透明な絵画…(講師:綿引明浩/画家)アクリル板を使用した講師オリジナルの写し絵アート、です。小布施では今回で3回目の人気講座ですので早めのご予約を。

天女

以前から気になっていた日本橋三越の天女像。約10年をかけ僕の生まれた翌年に佐藤玄々氏一門の手によって完成されたとのこと。My趣味のブツ系カテゴリーに入るのかどうかは微妙だが、そこはキャラが無尽蔵な仏教世界。例えば薬師如来を守護する十二神将には各々7,000人の眷属がその配下に従うほどなので、美しい天女さんのお一人やお二人いらっしゃってもぜんぜん  No problem ! しかもそのデコラティブ感は比較的華美な衣裳の菩薩系や大日如来さんもしのぐほど。よくぞやりきりました!ってことですよ。 *ちなみに一応撮影許可はとりました。近くの売り場のおにい様におそるおそる「やっぱり写真てとっちゃだめですよね…」don’t you? 的否定型疑問みたいなネガティブな問いかけをしたところ、「みんなけっこう撮ってますよ」とあっさり。ナ〜ンダとばかりカバンからゴソゴソと一眼レフカメラを取り出してバシバシ記録させていただきました。三越のおにいさんアリガトウ!

さて、明日12/22(水)〜28(火)まで本館6階美術画廊にて「酒器展」に参加させていただきます。相変わらずの芸風ですが、うまく場に馴染むかな…。お近くの方は天女高覧方々いかがでしょうか。

密会

photo:Ooigawa Rail

菅平高原から須坂・小布施方面に下ってくる国道406号線。道幅もそれほど広くなく、あまり国道らしくない古い街道。名所「臥竜山」を左にすぎるあたりから蔵の町の風情がどことなく…。本町通り「上中町」信号ほぼ角あたり、やはり古い商家をリノベーションしたショップ「ヤンネ」にてnana*t代表・中沢定幸氏+写真家・オオイガワレール氏と密会。実は両氏、昨今デザインコンペ「ライフデザイン信州」グランプリを受賞している。先日くだんの「ヤンネ」にて受賞記念パーティーが催されたのだが所用にて参上能わず、日をあらためて今回の密会と相成った。初対面の中沢氏、なかなかチャーミングにして才人。かなりのアート的戦闘値を持っていながら、ついついオヤジギャグ表現に走ってしまうあたりが憎めないところか。個人的にはもちろんZUGAYAプロデュースの松代清水寺縁起物シリーズ(ブツ画)にハマる。

2011,1/8〜 ガレリア表参道で開催の「LIFE DESIGIN展」にて中沢氏とのコラボが実現する。詳細は後日、乞うご期待!

*明日から「アバンギャルド・クロッキー」オープニング(神楽坂・ミラボオ)+「LABEL ×ART」(丸の内・丸善)の打ち合せのためしばし上京。

いわし

結局気になっていた「いわし」という名の猫は上巻の終わりから数えて8ページ目にでてきた。250頁分の最後の8。ま、下巻だけでもそれなりに読めるが、その後上巻を読むというのはそれほど面白くはないということを再認識した。あたりまえなんだけどね…。

AVANT-GARDE CROQUIS展参加/12.20(月)〜27(月)エスパス ミラボオ(東京・神楽坂/赤城神社参道)*20日オープニングパーティー。お気軽にどうぞ。

フツーのクロッキー展じゃないらしい。企画担当者からは「とにかくアバンギャルドなブツを」と要請されている。さてアヴァンギャルドって…どうしましょ。

順序

村上春樹・著「羊をめぐる冒険」を下巻から読んでみた。理由はある。以前上下巻で買っておいたのだが、そのまま読まずにほっといたら上巻が見当たらなくなってしまったからだ。結論から言うとそれはそれで楽しめる。物語りなどというもは恋愛モノにせよ冒険モノにせよツマルところ大概は唐突に始まるものだから、いきなり飛行機が千歳空港に降り立つシーンから始まったとしても、そういうオープニングだと思えば問題はない。たまになんの説明もない登場人物(動物)の名前がでてくることを除けば読書時間も半分になって結構なことだ。…といっても「いわし」という名の猫のことが気になって結局乱雑な本棚を再捜索し、なんとか上巻を見つけ出して現在、周知の結末のウラ付け作業中。多分僕は推理小説だって犯人を聞いてからでも楽しく読めるような気がする。そういえばたまに巻末の解説から読んでみたりもする。

核電池

「Atom Heart Mother」の由来について僕の素朴な疑問に対してコメントあり。その後少し調べてみたのだが、あるのねホントに「プルトニウム電池」。原子核崩壊の際に発生するエネルギーを電力に変換する原子力電池、だからあるいは核電池と言ってもいいのかな。なんか「Back to the Future」みたいだな。デロリアンの燃料もプルトニウムだったが、多分種類が違うのだろう。電池に使用されるプルトニウム238は放射線の管理が非常に簡単らしい。普通は分厚い鉛とかで遮蔽するところを紙一枚でもいいんだとか。確かに一度体内に埋め込んだペースメーカーに半永久的に電力を供給できるのだとしたら、患者さんにとっては電池交換の負担が大きく軽減されるということになるわけだ。それにしても健康であれば核の力など借りること無しに平均寿命80年前後、心収縮を繰り返し続けられるヒトのカラダってすごい。

原子心母

1012121970年にピンクフロイドがリリースしたこのアルバムを僕らが初めて聴いたのは14才の頃。当時の日本の宣伝担当者がこのバンドをカテゴライズするために銘々したとされる「プログレッシブ・ロック」は僕ら地方都市の一部の中ボーたちの間でも色濃く席巻の気配をみせていた。シングルレコードでは表現しきれない長編をシンセサイザー等の最新テクノロジーを駆使して制作する芸術性の高いコンセプトアルバムが次々と発表されていった。アルバム1枚2000円前後。中学生にとってはけして安い買い物ではない。それでもあらゆる手段を駆使して僕らはそれらの難解で魅力的な音を聴き続けた。金も英語力も持っていない僕らは、大概は比較的裕福な友人宅に押し掛けてはイメージだけを研ぎすませて聴き込んだ。イメージと言えばジャンルは違うが同時期にリリースされたアルバム・ジョンレノン「イマジン」もやはり同様の手段で衝撃を持って聴いた。「何かをイメージしろ」と言っているところまでは理解はできたが、平和へのメッセージを込めた楽曲であるという意識はなかった。僕らの住んでいるところはあまりに退屈でフツーに平和な街だったし、ベトナム戦争も東西冷戦も授業では習っていたが14才の小僧には全くリアリティーがなかった。それでも僕らは背伸びをし続けながらもこうした音楽を健気に求めて続けていたような気がする。

でもあまり背伸びをし続けると疲れるのでフツーの歌謡曲もそれなりに聴いた。麻丘めぐみも天地真理も南沙織も皆にフツーに人気があった。僕は伊藤咲子の「ひまわり娘」や「木枯らしの二人」が好きだったが今はフツーのオバサンになったらしい。僕もフツーかどうかはわからないがオッサンになって、当時お金がなくて買えなかった「原子心母」をAmazon.co.jpで購入したり、「ひまわり娘」のかわりに「ヘビーローテーション」をヘビーローテーションで聴いたりしている。

ちなみに「原子心母」というアルバム名だが、届いたCDのライナーノーツをみると、原題「Atom Heart Mother」は「心臓に原子力のペースメーカーを埋め込んで生きながらえている、ある妊産婦の話」という新聞見出し(原子力のペースメーカーなんてあるのだろうか、SF?)が由来とあるが、そんなエピソードを全く無視した直訳的タイトルはコピーとしてはあまりにも意味不明でステキすぎる。僕はずっとエンタープライズとか空母かなんかのことだと思っていた。