Jin Nakamura log

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一休その後

とりあえずNHK出版「オトナの一休さん」でさらっとアウトラインをつかんだ後、水上勉「一休」を時間をかけて読了。古い文語体の一休資料がかなり抜粋されていてなかなかに読み辛かったが、とりあえず水上氏は一休さんが大好きだけれど出来るだけその思慕の感情に流されず可能なかぎり偏らないな考察をしようとしたことはわかった。
ほとんど知らなかった中世の暗黒時代を生きた一休宗純の人となりの多少は垣間みれたけれど自分の中ではなんとも未消化なままなので安易な言葉は避けたいが、ただこんな人が部下や弟子だったらちょっとめんどくさいかなー…友だちだったらギリOKかな、師匠だったらあきれながらも面白そうだからついていくかな…てな感想が今のところ、、、と書いてみて、こういう破天荒だが逸材を活かすウツワが我が身にはまだまだ足りぬような気がしてきた。社会的共同体のような組織には長くとどまれず、多分尊敬される上司にもなれんな。

ま、それはそれとして写真中未読の日本詩人選27「一休」富士正晴。これは絶対面白い! ただし読み解ければ。

一節を引こう。
(漢詩:一休宗純/富士正晴氏による読み下し文+その解釈)

懐古

愛念愛思苦胸次  愛念愛思胸次を苦しむ
詩文忘却無一字  詩文忘却一字無し
唯有悟道無道心  唯悟道有って道心無し
今日猶愁沈生死  今日猶愁う生死に沈まんことを

エロスは胸を苦しめる
詩文は忘却 すっからかん
ロゴスあれどもパトスなし
まだまだ気になる生き死にが

一休はかなりの詩人でもあるのです。そして実は私、漢詩大好き。自分で作ってみたい!
漢詩の読み方の本は売ってるけど作り方の本はなかなか売ってないのだ〜。

18306

室町耽美抄

歴史の空白期間というものがある(僕にってことです)。
鎌倉時代末期〜戦国時代(織田信長が暗躍し始める頃)あたり。

だいたい鎌倉幕府がどうして滅亡したのか?
なんかぐちゃぐちゃな感じの南北朝時代の南北はどことどこ?
そもそも朝廷(天皇)ふたつってどういうこと?
その後室町幕府を開く足利さんたちはどこからやってきたの?
ていうか室町ってどこ?京都らしいけど京都にそんな町名あったっけ?
云々。

日本史の先生が時間がなくなって手を抜く明治維新以後と同格に単なる勉強不足で抜け落ちてるだけなんだが。
ま、今となってはWikiればだいたいのことはフムフムそーっだたのか…と大ざっぱにはつかめるのだけれど、そのぐちゃぐちゃ感のなかに埋没してる重要キーワード・人物=能・禅・茶/世阿弥・金春善竹・一休宗純・村田珠光ってココだったんだ〜とつい最近気がついた次第。

というわけで誰もが名前くらいは知ってる日本の伝統美の中からとりあえず手ごわそうだけど一休宗純あたりから掘り下げてみようかな。

 

文藝春秋挿画

文藝春秋8月号の目次挿画を担当させていただきました。画角がとても横長なので、お話をいただいたとき、どんな絵にしようかちょっとだけ考えちゃいましたが絵巻物みないで楽しかったです。異なる時間を一つの構図の中に描き込む異時同図法みたいなのも今後はやってみても面白いかもしれません。

タイトルは「海幸講」、この季節にはピッタリです。海の彼方から蛸・龍・伊勢海老・鯛・鰹・宝舟などがやってきます。一方、山からは大きな桃が…。

7/10発売です。よろしかったら書店にてどうぞ。

17708

続編から読む。

酔い覚ましに立ち寄った阪急京都線大宮駅の地上階にある本屋の平積みコーナーで、ふと目に留まった文庫本のタイトルは「冬虫夏草」。フユムシナツクサ…いやトウチュウカソウ…か、どちらにしても??。この虫なのか花なのかビミョーな感じの題目が妙に気になり手に取って数行黙読し、なんかイケそうな気がしてレジへ直行。そこから徒歩4分のホテルにもどり結局数ページ読んでそのまま寝てしまい、きちんと読み通したのは長野に戻った1週間後だった。

おそらく明治期の、ある物書きの日常が描かれているに過ぎないのだが、その日常がどこかヘン。現代のぼくらから見ると本当はだいぶヘンなのだろうけれど、おそらく筆者の品格のあり細部にまで心を砕いた言葉の紡ぎ方故だと思うが、“そんなこともあるよね…”と思ってしまう不思議。主人公が印象深い邂逅を果たす河童の少年も、天狗も、幽霊も、赤龍も、そして鈴鹿山中で宿を営むイワナの夫婦も。言葉にするとやはりオカシイ。スピリチャルといえばそうかもしれないが、なんか平凡なのである。平凡で美しい霊性。少し以前に読んだ泉鏡花の「高野聖」とはまたひと味ちがうのだなぁ。

“目に見えないモノ”をぼくらはどう処理するのか。友人の尊敬するお坊さんは真剣な表情で「信じるというようりそのように“理解”している」と言った。「ある」と思った瞬間にソレは「存在する」と、妖怪を生涯描き続けた漫画家のおじいさんは言っていた…ような記憶がある。そして何も見えない僕は「あってほしい、いたらいいな…」と思っている。

結局モノノケも神さんも仏さんもだれも見たことないじゃん!…実証的世界ではそういことになっている。でもね一方で「なんで人を殺しちゃいけないの?」の答えを倫理でも常識でもなく「祟りがあるからだよ」って言われたらとりあえず震え上がるほど納得しちゃう。全編「花」のなまえのタイトルで綴られる主人公の風変わりな日常は、たとえば現実的な閉じられた世界も、あるいは暗闇のなかでとらわれる禍々しい不安な感情も、そのどちらも穏やかに解きほぐしてくれるような気がするのです。

このささやかな冒険譚は実は続編であったことに読み終えてから気づく。読み始めてどうも設定がイマイチ不明でお話においていかれてる感があったのはそのためであった。しかし続編から読むというのはわるくない。逆に詳細な説明をさきにされてしまうと興ざめということもあるし。かのスターウォーズもエピソード4から始まってるしね。

また脇役たちの話す京言葉も1週間滞在した旅の風情も重ね合わさり物語のリアルな日常に介入できたし、余談だが話のなかに自分が住まう信州佐久のエピソードが盛り込まれており不思議な縁を感じてしまった。何れにしても我がココロの10冊にエントリーしたい1冊であるぞ!たぶん。

176025

 

ますじい

こんな老後を目指したい!…とひそかに楽しんでいたらFBの友だちprofに使われちった(笑)。いいなぁ…

井伏鱒二「文士の風貌」より。…いいなぁ…やっぱ。

さて、気がつけば一ヶ月以上もごぶさたでしたな。言葉にするのももどかしいと、とりあえず感じるままに流れるままに…そして描いて…という日々。そして今後はさらに筆をとることに時間を裂くことになるけど、たまには言葉も紡がなければね。

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Myths of Northern Europe

やっと宿題がおわった…と思う…。一口に本の挿画といっても本文15話分+見返し+本扉+目次+各章タイトルキャッチ…それに表紙画…となると結局20枚ほどの絵を描くことになる。編集部・本文訳者さんらとなんどもラフ原稿をつめ、内容を理解しながらの作業を繰り返し本画制作という段取りだから、そりゃ2ヶ月くらいはかかるわなー。ま、自分としては早いほうかも。締め切りあるって筆がすすむよね、やっぱ。

でも面白かった北欧神話。いままで私的にはなじみのない世界だと思っていたが、案外身の回りにはチラホラ気配がただよっていたようでもある。「指輪物語」とか最近ブレイク中の「進撃の巨人」(知人に勧められてチラ読みしたけど?だった)とか北欧神話を元ネタにしてる小説・映画・アニメ・ゲームなど多々あるのね。

ユミルという巨人から世界をつくっちゃうあたり、天の浮き橋からオノゴロ島をポったんする我が国の成り立ちよりもスケール感は壮大だが、ちょっとエッチなニュアンスもありなところなんかは洋の東西共通かな…という北欧神話、ざっと説明しますと、主神はオーディンという神様。日本で言えば天照大御神みたいなひとですね。このオーディンがいずれ訪れる巨人の一族との最終戦争「ラグナロク」を予感し、お話はその「ほろびの日に」向かってすすんでいきます…ってざっとすぎ? ま、とにかく北ヨーロッパのきびしい自然にはぐくまれた力強い物語なわけですよ!

てなわけで改めて一応コマシャールしときますと児童書「はじめての北欧神話」菱木晃子・文 ナカムラジン・絵 徳間書店/3月刊行です。

オーディン…オージン(児童書なので本文ではこのように表記されてる)…おーじん…おう仁…応仁…これ雅号とかにしちゃまずいかな…

表紙カバー色校正届いたのでアップ。あ、ちなみにオーディンの愛馬スレイプニルは8本足、うまく走れんのかなー。

14123

Mythology

14110

近所の奥様に「毎日マイナスで寒いですね〜」と挨拶された。

うすうす寒いなーとは思っていのたが、そういことだったのかと納得。それって絶対最低気温のことじゃないよね。事実本日の最高気温は−2℃…。冬至も過ぎ、これからは日増しに日が長くなるとはいえ地表に浸みた冷気は時間差でやってくる。備えてさえいれば冬はそれなりに楽しい季節ではあるのだがな。

さてblogもFBも年をまたいで放っときっぱなしだったのでそろそろ文字活動を再開しようか。

昨年11月のアタマに一本のTELあり。

「神話に興味ありますか?」

宗教の勧誘ではない、出版社から。そう尋ねられて僕は「ムムム…!」。興味があるなんてもんじゃない、ちょっとしたマイブームですらある。

仏教LOVEな僕はその愛(たぶん)故に昨今の日本の仏教(主に自分の身近ですが)に対してうんざりするような閉塞感を感じていたところ、折も折昨年は伊勢は20年ぶり、出雲にいたっては60年ぶりの遷宮が重なるとうい奇遇な年であり、春と夏にそれぞれにお参りすることもでき、いわゆる仏壇(みうらじゅん風に言うと…文壇と画壇とか言うでしょ)からのりかえて、今まで明白なビジュアルイメージが不足しているということだけであまり興味をもってこなかった神道世界に一気に浮気モードな年だったわけですよ。

まずは「よくわかる古事記」を精読(主に前半)。というのも前半はまさに神代のお話で後半になると天孫降臨してからの人の世のお話になってしまうので、ついついファンタジー優先となりますなー。で、けっこう神様の名前おぼえました。でも真名っていうのかな正式名称はムツカシイ…例えば「天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊」(あまてる くにてる ひこ あめのほあかり くしたま にぎはやひ の みこと)とかさ。また大黒様でおなじみの大国主命にいたっては呼び名がかるく10を超えたりするし。ま、とにかくそんな感じで事前学習もしつつ、日本を代表する神宮と大社にまずご挨拶にゆき、常陸、信濃などの一宮にも足を運び、機会があれば地域の産土神にも顔を出すというフィールドワークもこなしと、自分でもおどろくような熱の入れよう。

しか〜し! 話しを戻そう。電話口の編集担当者さん曰く「北欧の神話なんですが…描けますか?」僕「ホクオウ?…記紀神話じゃないの…」。編集「古事記はすでにスズキコージさんで出版されてます。」僕「そいつはプレッシャーですが北欧でも東欧でもなんでも描きまっせ!」ということで世界の神話シリーズ第二作目の表紙画と本文15話の挿画を数枚の試作トライアルを経て担当することになった。

そんなわけで師走から年明け寒波の今日にいたるまで来る日もくる日も僕はずーっと神様の絵を描いている。

バガボンド

あんまり長編コミックを全巻集めたりしないんだが…。もしかしてコレDoragon Boll海皇紀についでそろえちゃうかも…の気配。だってused、お安いんですもの105¥。せっかくなのであらためてWikiで武蔵さんのことリサーチさせてもらうと、そりゃ小説のようにはいかず諸説あるようだが、おどろいたのは彼、Artistだったのね。重要文化財として書画・工芸の作品が現代に伝えられているとは知りませんでしたよ。ネット上の画像なのでディティールはわからないけど「枯木鳴鵙図」など構図の取り方などなかなかですな…とはいえそれは一面。彼をはじめ400年ほど前の武芸者たち、命かけてホントなにやってたんだろ。理解しがたいような…でも妙に「へぇ〜…ふう〜ん…」などと感心してみたり。

ところで「バガボンド」のロゴ、20巻あたりからかわってるのね。最初のがいいかな…。

ちなみに途中番号がとんでるのは。これ以上一度に買うと持って帰るのが面倒…でも対・吉岡清十郎のくだりは見たい!…が故。 + そいや夕方からまた雪、明日は車でちょっと遠出なのに…。

vagabond

昨日の女流作家の件もそうだが、もうずいぶん以前にリリースされて話題になってるのは知りつつもなかなかきちんと受け入れてみるチャンスがないものってあるな。けど必要があればソレらのものは向こうからさりげなくやって来てくれるものなのだ。さて、今回のはどうだろう…。

vagabond」…

気がつくと仕事場の大机の隅に1冊づつ積まれていって…。タヌキの恩返しであれば山の木の実などを玄関先に人知れず置いていくところだろうが、犯人はそんな毛玉ではなくウチの末の小僧くん。春を遠ざけるようなこのところの寒波で自室が寒く、オヤジの仕事場の薪ストーブの前でぬくぬくと吉川英治原作の剣豪青春漫画を読みふけっては片付けもせずそのまま置きっぱなしにしていったらしい。

以前どこかのカフェの書架からなにげに数冊抜き出して、宝蔵院胤舜とのくだりを読み、剣の道ストーリーなどにはまったく興味はなかったものの、その画力と物語りのリアリティーにソリャ流行るわな…と納得したの思い出した。

当事者は経済的理由で現在3巻で停滞中のようだし、ここはひとつオヤジの威厳で残り31巻大人買い?…いややめよ。BOOK OFFあたりでusedでもぼちぼち集めようかな…。

暗黒神話

またタイトルがダーティーというかキッチュというかいかにも70年代というか…古書の山からつい手に取ってしまった一冊JUMP SUPER COMICS「暗黒神話」。持って帰ろうかどうかだいぶ迷ったんだけどね。諏訪の酒蔵で開催の古書市で冒頭、蓼科山、茅野市尖石縄文考古館あたりからのプロローグって、遊歴書房のベタな編集セレクトにあっさりのっちゃった格好。ヤマトタケル伝説を軸にアートマンの使命をもつ数奇な運命の少年がブラフマンに導かれ弥勒へと転生していく…て、これでわかる? ちなみにアートマン=芸術男じゃないからね。「意識の最も深い内側にある個の根源」なんだそうだ。ブラフマンは仏教界ではキャラ化されており「梵天」さんなんだが本来はこちらも「宇宙を動かす最高原理」とどちらも基本コンセプトが哲学的すぎて少年誌にはいかがとも思われたが、発刊当時は押しもおされぬオカルトブーム、奇想天外な神話的ピースと仏教的ロジックを面白おかしくパズルにはめ込んだチープなコラージュ的コミックは一応は受け入れられたのだろう。それにしても絵がいただけない。劇画とギャグマンガの中間みたいな5頭身キャラはもはや笑える…てそこまで酷評すんなら買わなきゃいいじゃん!てことなんだが、ヘンなモノ拾ってきちゃうんだな…たまに。おこちゃまがダンゴムシ拾ってポケットに入れて帰ってきちゃうようなもんだよ、たぶん。

それはそうとストーリー上で「神道集」を引き合いに、甲賀三郎伝説や九州クマソの古墳群、宇佐八幡と邪馬台国伝説などたしかに著者でなくても我が国の神話・伝説はのめり込む素材としては面白すぎる。それにしても伝説の地・諏訪と僕の住まう浅間山麓は地底国の風穴でつながっていたとは…。確かに近くの真楽寺というお寺にはかの甲賀三郎が龍に身を変えて姿を現したというきれいな池がありますもんね。なんか諏訪とご縁を感じますよ。

写真は左端は、お散歩コースから望める蓼科山。三郎さんが地底国に迷いこんだとされる場所で古来霊山とされてきました。我が地元のおばちゃんたちはなだらかな山頂に白き雪のうっすらと留まるを乳輪に見立て「おっぱい山」などと称しております。う〜ん、たしかに真横から見ればイイ感じのソレに見えなくもない…。

僕は風穴は通りませんがこの山の脇の峠道を越えてここ数年ちょくちょく諏訪におもむくこと多し。