Jin Nakamura log

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GW2days

NHKあたりの猛烈な特番攻めは必要以上の若冲崇拝現象を生み出していて如何なものかと不審に思っていたら、なんだ本展の主催だったのね。大挙して訪れた観覧者たちは今や近世アート界の国民的ヒーロに祭り上げられた異彩の画家の作品を前にして口々にかの放送局の解説者と全く同句のコメントを繰り返しながら30幅の「動植綵絵」の前を一寸ずりで進んでいく…いやすすまない…。

いいんですか?そんなに簡単に感動しちゃって。ヘンですよよく見ると。いや中にはよく見なくてもヘンテコなのもあるし。そりゃ確かに細かいですが、そのくらいこのクラスの画家なればだれでもできますよ。やっぱ王道は狩野派じゃないんですか?同時期の京都画壇であればよくよく写生を旨とした応挙の方がメジャーですよ!…などと若冲のネガティブイメージをいくら心の中で喧伝してみても、はるか先のガラスケースと僕を隔てる目の前の人垣は崩れるどころかますますその層を増していく勢い。

ということで以前からあればいいなと思っていて今回事前にヨドバシカメラで仕入れた観覧用(けしてイケナイことには使用しません)の4倍率単眼鏡をやおら取り出し観覧開始。まあ僕は比較的背が高い方なのでボチボチ役にたったけど背が低い方だったら残念ながらオッサンの後頭部の詳細くらいしか視界に入らなかったのではないだろうか。

途中から作戦を変更し、できるだけ人気のなさそうな作品を見つけてはガラス板に張り付いて見たりしつつ最後は疲れたので、もいっか…図録だけ買って帰ろと思ったらレジのおネエさんの顔が見えないくらいの最後尾に並ばなきゃいけない始末。結局ねばってみたものの金曜日のPM8時迄開館のギリギリまで人の途絶える気配はなく極端な宣伝効果の末とは言え改めて若冲人気を身をもって体感した2時間であった。

前日とは打って変わって気温が下がり寒風吹きすさぶ夜の上野公園を、わかってはいたものの少々重たい図録を抱えて現代の修行中の画家はアメ横方面へ姿をくらます。

で、ホントはそのまま最終で日帰りのつもりが、くらました先でちょいとひっかかって結局日をまたいでしまい、そのおかげでそういえば気になっていたエルメス銀座 Le Forumで開催中の「YÔKAÏNOSHIMA」 シャルル・フレジェ展」が見れて昨晩の若冲祭りの喧噪と対局の居心地よさにつつまれてちょっと幸せ。衣装に包まれた人(もはや人でない感じだけど)の表情を故意に見せていないのと、その土地の風景の中に佇ませて仮装(不思議とやらせっぽくない)させているのがまさに人ならぬモノを直感させてくれるので、なんか地球ってこうなんだーやっぱり…という感じ。ついでに前回まだ制作中でもらいそこねた「Soleil Noir」 ローラン・グラッソ展の冊子もgetで普段連休などには絶対移動しないのだけれどまあまあの休日だったかも。

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境内アート2016がお開きとなったおもいきや、呑み疲れ+睡眠不足のぐだくだの態のまま休む間もなく軽井沢ニューアートミュージアムにて企画展「Challenge wall」の搬入展示。50代後半に突入したOssanなのによくもつよカラダ…と思われますが実は境内で2日にわたり気を入れてもらったので案外大丈夫。ということで以下パンフより抜粋。(隈研吾氏の苔の森チャペルも必見です)

今やミュージアムショップは美術館のメインの展覧会とあわせて楽しむアートファン必見のスポットです。そんなご期待に応えるべく当館もオープン以来ショップ内容の充実に努めてまいりましたが、今回ショップ内の展示スペースを新しい表現の場として解放し、自らもアートファンと自称するショップスタッフ一押しの作家たちを紹介していく、アーティストとショップスタッフお互いにとっての「挑戦」という意味を込めた「Challenge wall」という企画をたちあげました。 初回は未成熟な“少女”の魅力を描き続ける飯島洋子、花というモチーフの美を生命の波動に展開する小山利枝子、多彩な表現を続けるなかで近年新しい仏画世界を極めようとするナカムラジンの3名の作家を紹介いたします。楽しいアートグッズに囲まれた中でお気軽にお楽しみください。今後はアーティスト提案のミュージアムグッズなども手がけながら定期的に継続してまいります。お見逃しなく!

CW校了_確認用低解像度

仏果山海圖

例のブツ(仏)はどうなっているのかというと…。なにかとご協力いただいている関係諸氏にご心配、お目こぼしなどいただきながら、それでも四曲のうち左から第三面格闘中まで進みましたる次第。言い訳をするわけではありませんが(ま、言い訳ですが)今回下図から合わせると同じ主線を仕上がりまでに五回描いている。1/4下図→原寸下図→本番和紙にトレース→トレースで線に勢いがなくなったのでほぼ全面修正→筆にて仕上げ線…て、なんと不器用なことか。効率がわるすぎるが今の自分にはこうでもしないと描けないし。その上ある程度納得いく線が引けたらとっとと塗りつぶしていけば良いかと思いきや、そりゃやっぱ塗り絵みたいにはいかんわな。もうホントすべてが試行錯誤でございます。それでこの程度かと言われちゃうかもですが…そうです、その通り!できたかなぁ…と思うとゴールはまた少し先へ霞んでいく感じ。まあ芸事ってそんなもんでしょう。でももちろん全く手応えがないわけでもなく、今回考えてみたら自分にとって今までに描いたこともないような大作へのこの取り組みはとて得るものも多いなと思っているのです。短編を得意とする小説家もたまには気の遠くなるような長編を書くと良い…と誰かが言ってましたが、なんか分かるような気がしますな。

で、言い訳はこれくらいにしまして。結局この時点では完成に至りませんでしたが今週末「境内アート」にて一旦公開いたします。途中の感じもそれはそれで面白いよー!…ということで是非信州小布施玄照寺へお出かけください!!

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Debut

油や年間パンフレットが校了となり近々配布となります。今年のオープンは4月23日(土)から。例年にも増して盛りだくさん、内容も充実となっております。是非おでかけください。

さて今年の表紙を飾るのは知る人ぞ知る…気づいていた人は気づいていた…見えてた人には見えていた…「油小僧」です。もともと油やには何かしら気配はあったわけですが、“まっくろくろすけ”みたいに人の出入りが増えれば増えるほどそういった類いのモノの気が少しずつ消えていきつつあるなかで、それでもなんとなくいるような…いやどちらかというと、いて欲しい的なキャラなのね。

ま、ひらたく言うと妖怪なわけで、一般人はふつう見えないわけで。ということでここ数年、女将の方から早くフツーの人にも見えるように視覚化しなさいとのお達しもあり、ついに開業5シーズン目にしてお出ましとあいなりました次第。

今回視覚化担当してもらったのはArt Project 沙庭でも企画させていただいた画家・飯島洋子氏。日頃得体の知れぬモノをチョイチョイ目撃してるらしいのでチラッと矛先を向けたところ思った通りわりとすんなり生み出してくれた。(本人は産みの親は油やにいて自分は育てただけだと言っている)

実は小僧については今まで何人かに視覚化を試みてもっらていたのだ。自分でもトライしてみたのだがなんかとてもヘンテコな絵になったような記憶がある。まあとにかく今回オフィシャルな容姿としてはこれで公認としてよかろうが、それはそれとして人それぞれの小僧がいていいと思っている。現実世界においてであっても人はそれぞれ同じモノを見ている気でいるが水晶体を通し脳で画像処理された映像は個々に当然差があるはずなのだ。あなたが見えているように僕は見えていない。だれも他人の脳の中をのぞくことはできない。

同じ風景やモノを描かせても人それぞれなのは単純に画力とか個性だけの問題ではないような気がする。師匠の絵をみるといつもそう思う。この人にはこう見えているのかと…。

話はそれたが、とにかく小僧はデビューしました。かわいがってやってください!

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Museum Day

時間とれないかなーとあきらめていたが、なんか呼ばれた気がしたので思い切って神楽坂での師匠の個展を見に1 day trip 慣行。とは言いつつせっかくなのでと朝10:00にキッチリみななとみらいに到着し、横浜美術館「村上隆のスーパーフラット・コレクション」を手始めに結局以下のハードコースになった。

横浜美術館→The Artcomplex Center of  Tokyo/石原七生展「はるか うつくしいほし」→国立近代美術館/「ようこそ日本へ」→新宿高島屋/「縄文ALIVE」→えすぱすミラボオ「生井巌展」という具合で、そのうち石原展と近美はともに最終日というギリなタイミング。一日5件はあまり経験がないがなんとかなるものだ。しかも途中で旧友を呼び出しお茶して〆に東京駅で最終ギリまで企画会議と称して飲み倒して日付が変わらぬうちに標高1000Mの浅間山麓に帰るという周到さ。敏腕ツアーコンダクターなみの手配である。

村上のコレクション展は彼の冠詞を外し、蕭白・白隠・一休宗純あたりをみるだけでも良いかと思い横浜まで足をのばした次第。蕭白4点、白隠 2点、一休書1点を個人所蔵とはまったくうらやましいかぎり。その他にも特に数えもしなかったがやたらある魯山人、井上有一の書から日本人大好きなホルスト・ヤンセンも多数、もちろんどうでもいいものも多数。直感にまかせたコレクションだからそれでいいけど、観る側がうまく切り取ればヘタな企画展より見応えあるかも。いずれにしても個人コレクションで公立美術館の企画展示室全室を埋められるとは驚きであるし、それだけ身銭を切って蒐集すれば美術博物館で入館料にて拝観するのとは異なった次元の見識が生まれるのは想像がつくというもの。

先立って森美術館「五百羅漢展」は観ている。彼の仕事については賛否両論聞こえてくるが(僕は嫌いではない)何れにしても誰でもできるような仕事ではなさそうだな。「やりきったのでもう死んでもいいかな…」なんていつか言ってみたいものだ。もちろん大きければいいとか長ければいいとか思わないが、彼のような美術家に限らずたとえば実業家などにしても一代でしかも若くして何かを成しとげてしまうタイプの人間をみるとなにか現世年齢(そういう言葉はないが)では計れない積み重ねを感じてしまう。魂年齢(そういう言葉もないだろう)というかね。ま、その話は説明すると長くなるのでまた次回…というより他の展覧会も良かったのだがそのレビューもそれぞれとても一言ではすまないのでまたの機会になにかに絡めて書きます。

*写真はコレクション展より。ちなみ右下帆船はさすがに彼の所有物ではありませぬ。せっかくだからと横浜風景。

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JOMON IDOL

ナカムラジン展「縄文アイドル」2/20(土)〜3/6(日)浅間縄文ミュージアム始まりました。

ここ数年仏画をテーマに偶像(IDOL)表現に取り組んでいるのだけれど、自分の中でてっきりそれは仏教圖像に限られたことなのかと思い込んでいたフシがあるが、つまるところ結局 “ヒト” あるいは “ヒトガタ” が好きな自分がいることに気づく。もちろん大きな意味で仏教という特定の宗教に俄然興味津々であり続けてることには変わりはないが、その仏教にしたって釈迦牟尼の時代には今のイスラム同様「偶像崇拝禁止」とされていた…けど結局人はヒトを求めるのだね。面影が欲しいのですよ、大好きな人の…で教祖入滅後500年以上たってから作っちゃった、禁をやぶって。おかげで僕はその2000年後、仏像ファンでいられるわけだ。

時代の振り幅が大きくて恐縮だが土偶は現在から5000年ほど前に制作されている(ちなみに埴輪は土偶じゃない)まさに偶像。仏像が盛んに作られるようになる3000年も前の話になるのだが、それはそれで彼らが残してくれたメッセージを介してちゃんと思いを馳せることができるから不思議だ。おそらくヒトは何を美しいと思うか、何(誰)を大切かと感じるかなどという点について5000年間それほど変わってないのかもしれないと思う。

そんなわけで今回土偶に向き合うという成り行きというかご縁というか…については自分の中では全く違和感がなく、もし自分が縄文peopleであったらこんなデザインするよなーという観点で制作してみたのです。

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縄文アイドル

明けて2016年、今年もよろしくお願いいたします。

日々めまぐるしくうつろう現実世界が時に美しくまた時に不思議で、なにか言葉にするのももどかしく、ニヤニヤしたりため息ついたり深呼吸したり、もちろん絵も描いたり…いろいろしてるうちに時はあっという間に過ぎ去り、ここ1〜2年ほどあれだけ好きだった“文字”としての記録もずいぶん怠ってしまった。たぶんただめんどくさかっただけなのだろうが「本当に大切なことはきっと忘れない…」と思うことにして、ハードディスクへの記録をあえて避けてきたようなふしもある。やはり好きで続けていた句会も昨年秋に辞めてしまった。もちろん俳句が嫌いになったわけではない。あたりまえだが自分の能力にも当然限界があるので、与えられた(限られたかな)時間の中での優先順位を決めたということかもしれない。思いのままに意味もなく膨大に蒐集した“資料”を今後は一つ一つ編集・整理をしていくことになるんだろうなきっと。

となるとやはり客観的に文字にすることは大切か。何れにしても時間がかかりそうだがまあぼちぼちやりましょう。

さてまずは今年最初の個展情報から。

ナカムラジン展「縄文アイドル」2/20(土)〜3/6(日)浅間縄文ミュージアム

(以下パンフレットより)縄文の記憶を辿る…という行為は果たして大げさなことだろうか。20万年前にアフリカで誕生した「知恵ある人間」が〝偉大なる旅〟を経てこの列島に定住して以後たかだか五千年ほど前のことだ。 たしかにその間に山野は姿を変え、川も深い谷へと浸食をとげたが事実彼らはここに暮らし、そして〝ヒトガタ〟のメッセージ「土偶」を残す。 その形象はあまりにも創造性に満ち、土塊に刻まれた線をなぞれば過去と未来が交錯する錯覚にさえとらわれ現代のアーティストを充分に刺激した。 近年仏像など独特な偶像表現で制作活動を続ける美術家・ナカムラジンが五千年の記憶を辿り、縄文に挑む第一弾。今回は「縄文アイドル」というテーマで「土偶」に着目し現代作家が考える土偶デザイン(平面作品を中心に約30点)を提案いたします。この機会に是非ご高覧下さい。

J_idolフライヤー

JIN’s Works 2015

煉瓦画廊2015_12校了

「古来西から渡る風に乗って亜細亜の東の果ての島国にあまたの圖像が渡ってきました。時に花鳥風月をカタチにし、まだ見ぬ神獣霊獣を想像して。また時に哲学や信仰をのせて。こうして人々があふれるようにデザインしてきたそれらのさまざまな圖像宇宙は作家に多くの新しいインスピレーションを与え続けます。陶磁の器は九谷の五彩と印判で彩られ、和紙には時空を超えた仏教的イメージが広がります。ナカムラジンの近作から最新作を是非お楽しみください。」

というわけで今年締めくくりの展覧会です。

2015,12/1(火)→12/7(月)11:00am〜7:00pm(最終日◎5:00pm終了)

銀座煉瓦画廊◎東京都中央区銀座4-13-18医療ビル2F(歌舞伎座横・木挽町通り)TEL/03-3542-8626  http://ginzarengagarou.com

本日「油や」2015年営業最終日となりました。今年は思いがけず制作に追われる日々が続き(現在進行形ですが)、油やに顔を出す機会もぐっと少なくなってしまいちょっと反省(3分だけ)。ま、それはそれとして間をあけず年末に向かって展覧会が続きますので順次告知いたします。

「ナカムラジン展/陶から紙へ、紙から陶へ。」11月6日(金)〜12(木)/6・12日在廊

古今東西・花鳥風月…亜細亜の果ての島国に、集まる圖像を綯い交ぜに。遊び尽くして紙から陶へ、描き尽くして陶から紙へ。

器スタジオTRY/東京都新宿区中落合1-20-16/03-3360-3155

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圖像宇宙 at Taipei

明日から台北での個展のため台湾出張です。初めて行く場所で初めての個展なのです。いったいナニに出会ってくるのだろうか…楽しみ。もともととりあえずなんでも受け入れちゃうニッポンていう土地で東アジアの圖像をいじって遊んでいので、たぶんなんか親戚に会いにいくような感じかな。

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