Jin Nakamura log

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セツナサとカナシミ

仏教には“幸福”という言葉は無いらしい。この言葉はありがちな話だが明治期に西洋の文化・言語が日本に入って来た時に“happiness”にあたる言葉がなく強制的に造語されたとのこと。そのルーツをたどれば胡散臭さがなくもない。一切皆苦と悟った仏陀が「とは言いつつも…」ということで求めたのは、だから“幸福”ではなく“安・楽”ということ。“ハッピー!”ではなく“リラックス”なのだそうだ。一応今は日本人なので感覚的にわかるような気がする。“幸福”を求めたらキリがないような気がするけど“安・楽”だったら「ま、いいか…」って感じ? そうは言っても煩悩や欲は文化を生むし、もし「ま、いいか…」って悟っちゃったりしたら僕は絵を描かなくなるかもしれない。“煩悩即菩提”と自分に言いくるめたいところ。セツナサやカナシミをリラックスして乗り越えられたさぞかしスゴイんだろうけど…そもそも“乗り越えよう”とする発想がまちがってるのか。ケンシロウは“哀しみ”を背負うことで、過去二千年の伝承者の誰もが会得できなかった究極奥義「無想転生」を極めラオウと対峙する。悟空は穏やかな心を持ち、強い“悲しみ”にさいなまれてスーパーサイヤ人に覚醒した。しかし彼らは果たして“カナシミ”を乗り越えたのだろうか。戦いはその後も延々と続く(それぞれ最終回までジャンプを買い続けたので僕は知っている…)。う〜ン…ムツカシイ…やはり秋は物思いにふけってしまうものなのかな。

雪虫

「ゆきむしが飛ぶさびしい季節だね…」大学時代農学部の友人のつくった一編の詩の書き出し。今どき“詩”をたしなむ…などという学生などいるのだろうか。もちろんその頃だってずいぶん珍しい男だったが(ちなみにフランス人の男子は思春期に一度はハマるらしい…一応フラスン人から聞いた)。障子紙のようなものに朴訥な墨の筆でしたためられた彼の詩がなんとなく気になり頼み込んで貰い受け、オトナになるまで大切に持っていた。詩人・中原中也が好きだった彼は30代半ばでかわいい奥さんと小さな子どもを残して急逝する。遠方だったため葬儀には間に合わず後日自宅に焼香に伺ったさい、共通の友人でもあった彼の奥さんに渡すべく、大学時代に彼が書いたその詩の紙片を持参した。和紙は十数年の時を経て少々黄ばんではいたが二十歳前後のピュアな感性は色あせずそこに刻まれていた。僕は“ゆきむし”というモノも言葉も彼の詩を読むまで知らなかった。北国の言葉らしいのでどちらかというとあたたかい地方の彼よりも僕の方が知っていてもよさそうだったのに。

今日“雪虫”を見た。そしてたぶん毎年その季節になると彼のことを思い出す。

そんな思い出に浸らずともたしかにこの季節はどこかセツナイ。しかし最近ハマってる養老先生にかかるとこの手の感情…例えば愛とか恋とかも全て身もフタもない話になってしまう。恋はビョーキと看破する。結婚すれば治るんだと…それができれば皆さん苦労はないのだが、どうも医者はとりあえずなんでも治療したがるってことらしい。そのままでもいいのに。[recently books]「脳と魂」対談/養老孟司+玄侑宗久

studless

例年に比べてかなり早いんだけどスタッドレスタイヤにはきかえる。来週より制作が始まる“アートに泊まるホテルプロジェクト”のため、いつ降っても(雪ですヨ)おかしくないという志賀高原に登らなくてはならないのです。1970年代あたりに建てられたであろうホテル旧館の各客室をアーティストがなんとかしちゃおう…という企画です。Jin’s roomはモアブ・エディションの全面的な協力(代表で職人の水上さんが刷ってくれます…感謝!)を得て壁に直接CMYKプロセスカラーに分版されたシルクスクリーンを刷っていきます。制作風景はちゃんと記録しておきますので後日報告。プランはこんな感じ。

応募要項

毎年四月恒例の「境内アート」(2012,4/21+22)、近々募集が始まります(現在要項制作中)。本来なら11月11日募集開始なのですが、今年はギリギリまで企画内容の検討が続き多少遅れる見通しです。関係各位にはご迷惑をおかけしますが、これも手づくりのイベントながら少しでも良い発表の場を作れればとの実行委員会スタッフ一同の想いの現れと、ご容赦くださいませ。とはいっても11月末には要項発送が完了するものと思われます。あわせてサイト応募も解禁となりますのでそちらもご利用下さい。いずれにしましても詳細がわかり次第告知いたします。

山麓帰郷

2日で戻るつもりがやはりムリか…結局3日間留守にして山麓に戻る。いつものことだが標高にして1000M近い移動は気温差ありすぎ!特に7日の都内はこの季節にしては異常なぬるさでありT-シャツでも過ごせそうな(事実皮下脂肪の多そうな人はそうしていた)陽気で季節感絶対オカシイ。それでも山麓はきっちりと寒く、秋の深まりは確実。さてミラボオ1周年記念展に急遽組み込まれた3日間だけの特別展、初日たくさんの方々にお見えいただき感謝です。3月までには課題も山積みですがなんとかしなきゃね。

さて[recently books]をこのところアップしてこなかったのでここでまとめて。これは自分のために記録を残してます。読んだ本のタイトルを忘れちゃう)「薬指の標本」小川洋子/「伏 贋作・里見八犬伝」桜庭一樹/「裏閻魔」中村ふみ/「男女(オスメス)の怪」養老猛+阿川佐和子/「人形作家」四谷シモン/「私と直感と宇宙人」横尾忠則/「百億の昼と千億の夜」光瀬龍/「百寺巡礼・奈良編」五木寛之/「仏教が好き!」河合隼雄+中沢新一…こんなところかな、やっぱりなんか忘れちゃってるのもあるような気がする。ま、そういう本はあまり身になってないんでしょうね。そんな中で気になる1冊は「仏教が好き!」河合隼雄+中沢新一。図書館読書週間企画10冊まで貸出しOK!ということでつい手に取ったもの。タイトルが軽い(装丁も、しりあがり寿でさらに軽い)のでホントに軽い仏教ブームに乗った啓発本みたいなのかなと思ってたらさにあらず。それなりに平易な雰囲気に編集されているようなのだがなにせ二人の智の巨人の対話集。宗教学・心理学の聞き慣れない専門用語がバシバシ飛び出し(なので注釈の量がハンパじゃない)僕のような凡夫にはちょっとキツい側面もアリ…なんだが、かれらが大まじめに語れば語るほどまたどこかユーモラスで(たぶんとても発想がユニークなんだと思う)ムツカシイんだけど引き込まれる。下ネタで恐縮ですが「釈尊と弟子のセックス問答集」の項目は笑える…というか古代インド人のそっち系の妄想力には唖然とします。仏陀も冷静に対応していたようですが本音は「おまえらエエカゲンニセェヨ!」ってことでしょう。とにかく今週のオススメ(来週があるかはわかりません)です。

美場テラソ2011_vol.4

今年度第4回目、美場テラソ講座・リトグラフ—植物を使って…(講師:近藤英樹/版画家)。今回は参加者15名中男性はお一人、ということでなんか女子会みたいな感じでそれはそれでよっかたです。。採集した植物を転写して製版ということで美場始まって以来のフィールドワークからのスタートとなりました。実際の工程などは近藤氏のブログにもアップアされてますので参照ください。…それにしても3時間15名のリトグラフ講座はチトしんどかったかも。近藤氏も初めてのことだとか。でもなんとなっちゃうものね。次回は来年、本濃くんのダンボールアート講座です。僕は明日からミラボオ特別展のため東京です。

特別展示 「三人展」◎神林 學・ナカムラジン・生井 巖 2011年11月8日(火)~11月10日(木)えすぱすミラボオ(神楽坂)が開催します。来年出展が決まったアートフェアのシュミレーション展示という位置づけです。もちろん一般公開もしますので3日間で短期間ではありますがタイミングが合いましたらお出かけください。GAKU氏とは何度かご一緒させてもらってますが日本画家・生井氏とは今回が初めてのコラボとなります。尊敬する作家の一人でもありますので貴重な経験となるでしょう。といっても時間の限られた中でのシュミレーション展なので僕は50号サイズのデジタルプリント2点(bodhisattvaシリーズの一応新作ではあります)は持っていく予定。+明日11/5は隔月恒例の美場テラソ・アーティストワークショップです。今回は近藤英樹氏によるリトグラフ講座/以下講師からの内容紹介/リトグラフは絵を描くことにより版をつくるユニークな版画技法です。油性の描画材で絵を描くと版にすることができます。ただ絵を描くのはペンや筆だけとは限りません。今回のワークショップでは植物そのものを使って描き、版を作って頂こうと思います。まず身近な植物を採集しに行くことからはじめ、その植物を版に転写することでリトグラフを体験していただきます。紙には色を使って刷っていこうと思っています。浮かび上がる植物の形は普段気付かなかった景色を見せてくれるかもしれません。/当日参加も若干可能かと思われます。興味のある方は是非!

西国紀行_6

ながらく続けてきました西の旅紀行の締めは京都タワー展望台から大阪・兵庫方面を望むの圖で。ツレのオネエさまのたっての希望(泊まったホテルでタダ券をもらったので、というのが真相)でのぼりました。茜色に暮れようとする西空につい昨日の友人たちとのあわただしいサヨナラを重ね合わせてチト感傷的…いわゆる祭りの後症候群(?)というところでしょうか。とはいいつつもやはり旅はよいものオツなもの。そのうち芭蕉翁にならって吟行などやってみたいものです。そういえば最近誘われて始めたまったくお金のかからないオトナの遊び「句会」仲秋の巻の僕の投句などをついでに…。

「秋風に 消えようとする 飛行雲」

「十六夜の 琥珀に進化 とどめけり」

「吾も亦 紅なり君の ほほ染めて」

そんな感じカナ。

西国紀行_5

西の旅報告もそろそろ終わりに近づいてまいりました。さて京都ではフランスで活動してる友人のジャズグループ“ky”の仲野麻紀+Yann pittardに会いに。彼らが招聘されている京都精華大学でおこなわれるレクチャー講義に潜入。この大学はたしか日本で初めて「マンガ学部」が設置されたことで知られてるんじゃないかな。30年ぶりくらいに叡山電鉄(森見の小説によく登場する)に乗って精華大学前駅で降りるとそこはもう大学構内。久しぶりに大学というプチ治外法権な雰囲気を感じつつ怪しげなオッサン2名と同い年だけどオネエさま1名はさっそく腹ごしらえのため前途ある若者たちに交じって学食へ直行し1杯200円也の素カレーをかっ込んで午後一のレクチャー会場へ急ぐ。この度のメイン講師はMoussa Hema。アフリカ、マリのバラフォン奏者である。見た目と構造はいわゆる木琴であるが反響部分に瓢箪が使われていて、さらにその中にクモに巣を作らせ音をあえて濁らせていて興味深い。レクチャー後に構内で場所を移してkyメンバーらとミニコンサートを開いてくれた。やはり打楽器はココロ躍る。短い時間だったが素敵な演奏をありがとう!帰り際に購入したMoussa HemaのCDにサインをお願いしたのだがフランス語圏のひとには英語のアルファベット発音がほとんど通じず苦労した。JINは酒の名前だと言えばよかったか…。

西国紀行_4

再び西の国に想いを馳せて…。お世話になった方々・友人らにあわただしく別れをつげ次の滞在地へ。駅までの間、竹野町からいくつかのトンネルを抜けて豊岡市内へ向かう途中で数日間つながらなかったケータイの電波が通じるようになる。(現場はdocomo以外は電波塔が未設置のためつながらない)今時海外だって通話可能なのに…。だがしかし! 昨今「繋がろうニッポン!」みたいなコピーが幅をきかせているが、本当にそんなにいつもいつでもナニカと“繋がってる”必要があるのだろうかと常々思っている。♪会えない時間が〜愛育てるのさぁ〜♪…と郷ひろみも歌ってるではないか。光あるところに影あり!ケータイなくとも子は育つ!…よくわからなくなってきたが、とにかくたまにはそういうこともいいもんです。いずれにしてもナンカ異世界から現実世界に戻ってきてしまったような不思議な気分でした。さて豊岡駅にて乗車直前この地方の県民食(?)「へしこ」(サバ・イカなどをぬか漬けした保存食、酒のつまみに絶品なり)を駅前のスーパーで地元住民のようなフリをして購入し(地酒「香住鶴」のワンカップも忘れず)特急「きのさき」京都行きへ乗り込む。