Jin Nakamura log

マルチタクス

もともとヒトは2つ以上の仕事を同時に進行するのが困難であるのに、脳自体は切り替えが得意であるため、人はあたかも自分がマルチタスクを行っているかのように感じるだけらしいとのこと。すでに「女性は男性に比べてマルチタスクが得意」という幻想は否定されて久しいらしいが、折りにふれ自分の中の女性性のようなものをうっすら感じなくもないので(べつにオネェ系ということではないのです。男性の作家の中には多いのではないかな)今回のそのような能力発揮かと勘違いしつつ全く傾向の異なるテーマ作品を同時進行している五月哉。

なにか一筋の凄みに欠けると気づき、最後に筆一本でできることを極めんと志したここ数年。それはそれで継続中であるが、結局いろんなことをやっている。多様性が求められる世の中、こんな自分でもまた良しと諦める(これはポジティブな意味です)ことが肝要かと。加えて今年は2年に一度、陶磁器をたくさん作る年なのでした!

志賀高原ロマン美術館での美術館初個展も昨日無事千秋楽を迎えることができました。本来であれば夏の開催予定でありましたが春先の緊急事態宣言の影響で2ヶ月順送りの開催となりました。当初予定ではオリンピック開催とも重なりインバウンドの観覧者なども期待していましたが、世の中が思いもよらぬ事態に展開し一時期は音楽・演劇なども含め芸術的な活動が大きく制約をうけることとなり、私の展覧会も必ずしも晴れやかな気分だけでのオープニングとはならなかったわけですが結果的には2020年のこの時期に開催できたことは意味深いものとなったと感じています。
いっときは不用不急と誤解を受けたコンサートやお芝居、展覧会などの表現活動は結局ヒトはが希望を持って生きるためにゴハンと同じくらいとても必要なモノであった気づくまでにそれほど長い時間がかからなかったように思います。
もちろん今もって一定の行動の制限や注意喚起は続いていますが、そんな中であってもわざわざこの展覧会を目指して来ていただいた方々が多数いらしたとのこと、最終日は特に館の一日の入館者数が過去最多になったことなどスタッフの方からお聞きするにつけホントに有り難い気持ちでいっぱいです。そしてこんな私が生み出したモノたちではありますが、それらに触れていただき少しでも何かしらでも一瞬でも気持ちが上向きになっていただけたなら良かったなーと思うのです。
単純な自己表現を少しだけ超えて、自分にとってもそんな表現の受け渡しの意味のようなものに気づき始めた2ヶ月でした。
本展を企画していただいたロマン美術館学芸員の鈴木さん、サポートいただいた山ノ内町関係者のみなさま、そしてこのような時期に志賀高原の麓まで展覧会に足を運んでくれた方々にあらためて御礼申し上げます。ありがとうございました!!

引き続き間髪入れず恐縮ですが告知です。
今度はギャラリーという空間ですが今回北信濃まで来られなかった方々、都心でやります。ご都合つきましたら是非。

ナカムラジン◎偶像寓意花鳥博覧美術展[Neo-Japanesque]
12月2日(水)〜12月8日(火) [最終日午後6時終了]
銀座三越 本館7階 ギャラリー
ユーラシアの東隅に浮かぶパラボラ型の島国に、遠く西風とともにやってくる思想と圖像の混沌は小さく美しく結晶化する。作家はそんな風土にシンパシーをもちながら多様な作品は生まれてきます。Neo-Japanesque…今様和風…縄文から令和まで、時空を超えた小さな博覧会をお楽しみください。
https://www.mitsukoshi.mistore.jp/…/shopnews0128.html

またまたギリギリまでの準備で告知おくれました。初めての公立美術館での個展です。

「偶像寓意花鳥浪漫美術展」

山ノ内町立・志賀高原ロマン美術館にて9月12日(土)〜11月29日

開館時間:9:00〜17:00 木曜休館 入場料:大人500円、小中生300円

 

 

もう4年が過ぎてしまった「縄文アイドル」展。土偶デザインを30点を目標に縄文時代の偶像(アイドル)を展開した展覧会でしたが、ついにその立体編を発表できることになりました。そもそも土偶じゃねーし!というツッコミをよそに“青銅偶”、“鉄偶”、はては“アルミニウム偶”までもはや縄文だか弥生だかわからぬ展開となりそうですが、二つの時代に明確な境界はなかったとの説もあることだし…ま、作りたかったんだからお見逃しを。

ナカムラジン展「縄文アイドル」(立体編)浅間縄文ミュージアム2020年2/8(土)〜2/24(月・祝)*休館日:2/10,12,17 9:30am〜5:00pm

おなじみのコピーではじまる美術家・ナカムラジンの古典でポップな面白色絵と印判陶磁器。
約2年に一度、恒例裏渋谷円山町路地裏不思議店irodoriyaさんでの個展です。

2019 11/2(土)~ 11/10(日)
OPEN/pm1時〜7時*最終日pm5時半まで。会期中休/水,木
https://ameblo.jp/irodoriyama
東京都渋谷区円山町14-11ニューライオンズ渋谷102 TEL/FAX:03-3462-2321

言祝ぎ

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高校野球のお兄さんがいつまでたっても年上に見えていたのはさすがに遥か昔のこととなったが、ここ数日何か違和感があるなーと思っていたのは新天皇がすでに自分よりも年下であったことに気づいたせいかもしれない。生来の役割とはいえ、國の象徴として生きる唯一無二の存在たる宿命と覚悟はその人よりも年長になった自分にもまったくもって想像は難しい。

平成から令和への改元の騒がしさもそのうち冷めるだろうが、実は自分の中ではここ数年ささやかな〝天皇ブーム〟が続いている。

まさに初代元号「大化」以来白村江の戦いから壬申の乱を経て、飛鳥の地を舞台にした天智・天武・そして女帝持統…と続く古代史を彩る歴代天皇の真実の姿を追い求める歴史家や作家がことのほか多いことを知り、昨年秋にはとうとう彼の地「飛鳥」まで足を運んでしまった。

飛鳥…そして奈良は田舎である…が、ただの田舎ではない。屋根のない博物館とはよく言ったもので、まさに遺跡の街なのだ。つい数十年前までは石舞台の上で野良仕事の合間に昼寝くらい平気でしてただろう。季節外れの世界遺産法隆寺はおどろくほど閑散としてるし、たとえば止利仏師由来の我が国最古の鋳銅仏「飛鳥大仏」などはその由緒伝来と反比例するほどにフツーに扱われていてお姿写真も撮り放題。小さなお堂に参集した善男善女からアイドルのようにスマホを向けられてもなお平然と瞑想しておられる。とにかくのんびりとしたものだ。千年都であり続けた京都もいいが、やはり千年ほっとかれた奈良はまた格別な魅力がある…と予々思っている。

話はそれたがとにもかくにも元号は変わった。初めての日本古典由来ということで往時範とした大唐国の末裔中国では「いや元をたどれば…」的牽制があったと聞く。元号の出自を自らの文明由来とするも、そしてそれは正しいとしてもすでに当該国はその文化も制度も手放して久しい。文化とは不思議な縁で繋がるものだ。先の大戦での敗戦国ではそれが残ったし、一方戦勝国では共産主義が皇帝を一民間人たらしめた。もう何年も前に、背番号を与えられた愛新覚羅溥儀の古びた映像を観た時、そのことの正否の事情は想像できなかったがイデオロギーの残酷さのようなものだけは理解できた。

日本のエンペラーはよく歌を詠む。心浮き立つときも、また不幸な歴史や受け入れがたい現実に直面しても歌を詠んでその地に残す…ことをしているらしい。「言祝ぎ」…言(こと)によって祝ぐ(ほぐ)。 言葉には呪力があって、将来の幸福を口にすれば いつか実現するという。なんの権力(チカラ)も持たないひとが何の確証もない方法で、この國のどこかでぼくらの幸せを祈っている不思議の國ニッポン。

*写真解説(いづれも奈良県明日香村にて)/左上:石舞台古墳でボランティアで解説してくれるおばちゃんの持っていた明治〜大正期の石舞台の古写真/右上:鞍作鳥(止利仏師)作の本尊像「釈迦如来像(飛鳥大仏)」/下:聖徳太子誕生の地とされる橘寺より蘇我氏居住跡甘樫丘方面を望む明日香村風景

右隻

 

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「仏果山海圖屏風」。制作開始から都合4年が過ぎようとしている。4月月20日、第16回「境内アート」にはギリなんとか。さすがに表装までは間に合わなかったが原画の完成は目指しています。玄照寺第二十三世住職葦澤義文氏の讃もいただきました。是非お出かけいただきご覧下さい。

 

 

 

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昨日新聞の取材を受けて…しかもとても丁寧に取材していただいいて結局自分の作家歴ざっと30年分を語ることになる。ちょっとしたギャラリートークなどでざっくり紹介する機会もなくもないが、仕事場にて当時の資料などを引き出しながらお話をするなどということはまずないので懐かしくもあり恥ずかしくもあり。
歴史は大切だが、たかだか30年程度の回想など普段であればさほど意識することはまずないし、たとえ機会があっても、またその時点でもということであっても「回顧展」などというタイトルで存命中に展覧会はしたくないなと思ったりもするが、今この瞬間が大切なんだよ!と意気がってみても、過去は意識せずとも我がタナゴコロの内に自然とにじみで出て、生み出されるナニかの背景に通奏低音のようにどこかで自分の個性を支配しているのは間違いない。
この度の取材のような場合、その根拠がわかってるものについてはもちろんちゃんと説明ができるのだが、今回仏画を描き始めた経緯を説明するにあたり、「そもそもなんで15才で仏像にハマったのですか?」という質問に答えがつまってしまった。前世で作ってたんじゃないですか…とか、女の子に一目惚れすんのと一緒ですよ…とか、およそロジカルな説明とはほど遠い言い訳をしつつも、改めて問われるとやっぱりわからない。仏像好きのお爺ちゃんの影響ですとか、おウチの隣りが東大寺でしたとかいうならねえ…。
いずれにしても理由はわからないけれど自分の人生の中で欠かせないモノであることは確からしい。

というわけで(唐突だが)大人の遊学旅行行ってきた。
まずは生駒郡斑鳩町法隆寺。

偶像寓意花鳥図譜

ナカムラジン展[偶像寓意花鳥図譜]
会期:12月5日(水)〜11日(火) *最終日は午後6時閉場  会場:銀座三越 7階 ギャラリー
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ヒトもケモノも鳥たちも、どこか見覚えのある一見古風なキャラクターたちは、時空を超えた花鳥図という新しい物語の中で奇妙な融和と邂逅を果たします。多様な表現で制作活動を続けるナカムラジンが近年取り組む偶像寓意花鳥図譜。そこに隠された寓意を読み解きながら、その独特な作品世界をお楽しみください。

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