Jin Nakamura log

Posts in the art category

兎手空拳

今回制作した新作10点のうちデジタルプリントのままになっていた残り3点のリトグラフ制作の色合わせに立ち会う。摺り師の梅田氏には毎回大変お世話になってるわけだが、いつも彼の…いや彼だけではないな、手伝ってもらってる職人肌の人たちの仕事ぶりをそばでみていて思うことは、一連の工程を敬意をもちつつ知っておくことには全く意味はあるのだが、やはり自分の仕事ではない…ていうかデキナイ。

以前作家同士で飲んでいて「ナカムラさんは最終的にはどうなりたいの?」と聞かれてしばし考え多分僕は「できることならば自分ではあまりつくりたくない」と思ったような気がする。モノを創り出したい時に躊躇なく生み出せる環境をつくることができたらいいなとは思っている。それは芸術的センスなどとはちょっと別モノな能力なのだろうけど。

いずれにしても現在そのような環境にはないし、そういった能力があるのかどうかもよくわからないので、結局ほとんどの場合自力で産みだすけどね。

oazo 4F

1日から始まった「LABEL match ART」展示風景。初日、二日目と都内また遠方から足を運んでいただきました皆さんありがとうございました。明日はアーティストワークショップ「美場テラソ」(小布施町)のため一旦長野へ。5日〜最終日7日までまた上京します。概ね昼からの在廊となります。不在の場合はご存知の方はケータイへ。

近況

グループ展を含むとはいえ2つの展覧会が1日と空かず続くというのはやはりあまりよいことではない(もちろん自ら望んでフィックスしたわけではいが)。おかげで絞り出すように生まれてきた自分でも興味深いモノはあったが多少のリクスも同時に。元来ナマケモノなので久しぶりに“努力”というものをちょっとしたような気もするがペースが乱れるのも困りもの。昨日やっと後半展のブツ梱包・発送を済ませる。展示台も含めて13個口…こんな量送ったの初めて。

さて諸々の準備等で告知が送れていた「美場テラソ」。今年度も始動します。アートファンには今回も魅力的なラインアップとなっております。以下一覧にて紹介。

6/4(土)銅版画に挑戦…(講師:吉村正美/版画家)
へこんだ部分にインクをつめてプレスして刷る凹版技法の版画講座です。今回は銅板をエッチング(腐食)して製版する本格技法に挑戦します。
7/16(土)ロウ画という技法で絵を描いてみよう!…(講師:山中克子/ろう(パラフィン)画家)
ろう(パラフィン/ろうそくのロウ)の水をはじく性質を利用して水性絵の具と併用し不思議な絵をつくります。今回のテーマはLOVE。しあわせやうれしい気持ちなど表現しましょう。
9/3(土)木版リトグラフ講座…(講師:梅田明雄/梅田版画工房摺り師)
平らな版画。版を彫るのでもなく引っ掻くのでもなく水と油の反発する性質を利用するこの方法では手描きのような版画を刷ることが可能。前回の木版リトをさらに発展させた講座です。
11/5(土)リトグラフ—植物を使って…(講師:近藤英樹/版画家)
身近な植物を採集して版に転写。その痕跡をリトグラフ(版画)として紙に刷りとります。植物の形はどんなイメージをつくるでしょうか?
2012  1/21(土)ダンボールで動物お面を作ろう!…(講師:本濃研太/彫刻家)
話題のダンボールアーティスト本濃独自の手法を伝授!? 身近にあるダンボールを使ってあなたのアイデアで不思議な動物のお面を作りましょう。
3/17(土)羊毛のフエルト化—平面から立体を作る…(講師:佐藤比南子/羊毛造形作家)
段ボール片に羊毛を巻きつけ、フェルト化(長さ90ミリ、直径20ミクロンの繊維を洗剤入りの湯を振りかけ揉んでフェルト化)します。中身の段ボールを取り出して立体へと固めていきます。

silkscreen

「観月紀」「海幸講」2点のデジタルプリント作品最終工程、シルクスクリーンによる透明インクのコーティング作業。MOAB EDITIONにて。機械刷りのプリント工程を初めて見学。いつも思うことだが、やはり職人の手さばきは小気味がよい。

Lucky Cat

5/25〜31「九谷ヌーボー」主役クンの画像。キャトグラファー・板東寛司氏撮影。新作の上絵転写・銅版転写の蕎麦猪口を含む作品はすべて板東氏に託す。写真作品は高さ50cmほどあるが、追加製作した「なんど猫」は九谷から会場に直送とのことでまだ会っていない。仕上がりが楽しみ。引き続き丸善丸の内店で開催される「LABEL match ART 展」にスベリコミで入れようとデジタルプリントA1サイズ2点のデータ鋭意制作中。タイトルは「観月紀」「海幸講」おそらく。

moab-edition

Moabとは、アメリカ、ユタ州南東にある町の名前だそうだ。その名を冠したプリント工房・MOAB EDITIONに6月の展覧会用作品のデジタルプリントを依頼。21年間ロスアンジェルスでシルクスクリーンの摺り師として活動されてきたが近年の急速な需要にともないデジタルプリントの技術も身につけて帰国。2年ほど前になんと我が家から車で10分もかからない浅間山麓にスタジオオープン。なんかアメリカのスタジオみたいで(みたことないけど)よいです。船便でこの機材全て運んで来たんだって…スゴイ!

生活の過剰

2011,5/11(水)〜17(火)銀座煉瓦画廊にて「東日本大震災の復興を祈年して〜画廊コレクション+10人の作家によるチャリティー展」に急遽参加。画廊コレクション版画作品と今回自主制作したwebサイトトップページ画像A2ポスター「命字系」を出展します。なおポスターは現在おぶせミュージアム+FLAT FILEでも復興支援の目的で取り扱っていただいてます。引き続きご協力いただければうれしいです。

以下に今回の煉瓦画廊のDMに添えられた芥川龍之介の言葉(4/7毎日新聞コラムより)を添付。

「芸術は生活の過剰だそうである…しかし人間を人間たらしめるものは生活の過剰である。僕らは人間たる尊厳の為に生活の過剰を作らなければならぬ…過剰を大いなる花束に仕上げなければならぬ。」

「人間を人間たらしめる」営みは、震災で壊れた世界を少しづつ修復していくだろう…とコラムは結ぶ。

セツナサ

何年か前に車のラジオから流れてきてずっと気になっていた「朧月夜〜祈り」。いつかちゃんと聴きたいと思っていた。このアーティストの声は切なく、そして魅力的だ。ビジュアルがなんとなくダーティー(?)なので普段はあまり聴かないんだけど…(そいう理由もヘンだが)。

原曲の唱歌「おぼろ月夜」は北信濃出身の高野辰之が作詞している。「菜の花畑に入り日薄れ…」の歌詞は有名だが、2番を改めて聴くと高野の生まれ育った原風景への慕情がいたいほど伝わってくるようだ。「里わの火影(ほかげ)も、森の色も、田中の小路をたどる人も、蛙(かはづ)のなくねも、かねの音も、さながら霞める朧月夜」あれもこれも、ここもあそこも…と、ただただ子どものように言い連ねているだけだなのだが、そこがまた切ない。僕らにとってのふるさととはそのようなものだろう。そしてこの詩に描かれた風景は長野県飯山市に今でも実在する。ちなみに唱歌「ふるさと」も高野の感性が紡ぎだした作品。

COVER「朧月夜〜祈り」はバイオリンをベースに編曲されていて、これがまた泣かせる。「琴線にふれる」という言葉があるが弦楽器ってひとのココロをなんでこんなにざわつかせるのだろう。平安の御代に日本から遠く離れたふるさとをひたすら想い、鬼となった輩(やから)が「玄象」という大陸から渡った宝物の琵琶を盗んで羅生門で切なく奏でる…という古い話を思い出しながら自分の生み出すものに欠けているのはこの「切なさ」かもだな…などと考えている。芸風だからしかたないけど、でもいずれそんなものが少しでも醸し出されたらいいと思う。

マッチラベル蒐集家・加藤豊とアーティスト・なかむらじんのマッチ・コラボレーション。明治という近代に突如出現した痛快無比な商標マッチラベルデザインの数々。その独特の意匠・キャラクター、 和洋文字、 装飾の絶妙さは現代のブランディングをかるく凌ぐ !?
てなコピーで始まるコラボ展。かなりチカラ入ってます。今回相方の加藤氏も経験豊かなグラフィックデザイナーなんですが、お前がやれ…ということでDMデザインはナカムラが担当。6/1〜7 丸善丸の内本店4FギャラリーA(東京駅出てすぐのオアゾです)。かなり濃い〜ィ世界だと思いますが新作リトグラフ10点まずは思いっきりやりきりたいと思います。お出かけくださいね。