Jin Nakamura log

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相変わらずブログも全く更新せずに何をやっていたかというと以下の如し。
一昨年から思うところあって始めた「平成絵空事百珍」。No.001〜004までは樹脂凸版なる方法を思いつき、なんとか自費自刷り制作を試みたが、この度7年に1度の好機を迎えて…というか便乗して、通しNo.005〜010の6点分を、版元・川辺書林梅田版画工房の絶大なる協力を得て、地元の古刹、国宝善光寺へのオマージュを込めて刊行の運びとなったという次第。明日より順次公開致します。もちろん予約販売受付中。
仕様:リトグラフ4色4版(刷り・梅田版画工房)/和紙・生漉自然色版画用紙)/37×27cm/6種・各エディション50部限定/シート価格(税別):15,000円
作品解説・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 「一光三尊」
 一つの光背の前に中尊と脇侍の菩薩が立つ”一光三尊像”の特徴を持つ秘仏「善光寺如来」。現在我々はその姿を映すとされる、前立本尊に7年に一度まみえることかなうのみです。
 平安時代の歴史書「扶桑略記」によれば、欽明天皇13年(552年)仏教公伝とともに最初に日本に伝わった仏像がこの善光寺三尊仏だとか。この説の通りだとすると飛鳥時代、日本の仏教彫刻史上記念碑的作品であり、聖徳太子ゆかりの法隆寺「釈迦三尊像」(止利仏師)よりもさらに100年ほど古く伝わっていることになります。確かに中尊阿弥陀仏の左手は、人差し指と中指のみを下げて伸ばす「刀印」で飛鳥・白鳳時代の特徴。法隆寺仏とも合致していてとても珍しいもの。
 ことの真相は歴史学者に任せるにしても、遠く天竺より百済を経てこの国に伝わった最古の仏像がこの信州に今も在るとされ、その本来の姿を心に想像しつつ、三国伝来の時より1500年を越えて今なお多くの信仰を集め続けている不思議な力を感じざるを得ません。
 本堂背後の光背には秘仏をイメージして中尊の「刀印」と「施無畏印」のみ。さらに脇侍の観音菩薩と至勢菩薩それぞれを表すとされる梵字にて表現してみました。
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作品解説・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「定額山」
 善光寺の山号「定額山」は表参道より境内に入って最初の門「仁王門」にその額面をいただく。参拝者を最初に迎える仁王は”二王”からの変化。正しくは金剛力士像。ことの始まりと終わりを現す阿吽の形相で睨みを効かせる、いわゆるお寺の入口の定番的仏教彫刻です。
 かの伝説的仏師集団慶派の祖、運慶・快慶による東大寺南大門の金剛力士像はあまりにも有名ですが、その規模の差はあるものの、彫刻的クオリティーは決して引けをとらない傑作と以前から一目置いていました。それもそのはず、作者は美術の教科書などでおなじみ「老猿」の作者で明治期を代表する木彫家・高村光雲とその弟子の米原雲海。秘仏であるご本尊の歴史的カリスマ性には及ばずとも、血管が浮き立つほどに全身に力をみなぎらせ、諸悪を排除しようと敢然と立ち向かわんとする凛々しきお姿には、恍惚的な癒しさえ感じます。
 門をくぐって2体の裏側にそれぞれもう1体づつ、北面に向かって安置されている同作者の彫像に目を止める人は少ないでしょう。本堂に向かって右が「三面荒神」、左が「三面大黒」。北側で自然光が入らないので、よほど目を凝らさないとその全体像は把握できませんが、それぞれ三面六臂の威容なお姿、こちらもまた秀作まちがいなし。
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