Jin Nakamura log

一過

6月の台風が過ぎ去ったあと、ソラの景色を仰ぐと自分は惑星に立ってるんだとあたりまえのことを実感する。道をゆけば折れ散らばった細かな枝や葉が昨夜来の突風で散乱しどことなくあたりは木々の体液のような匂いに充ちている。とくにモミやカラマツなどの針葉樹はその香りが強いようだ。以前山をよく知る友人が、一緒に黒姫を登ったとき疲弊した僕にモミの葉裏をこすって匂いを嗅ぐとミントのような香りがしてちょっとだけ気分がシャキっとなる…なんてことを教えてくれたことを思い出した。そんな彼もすでにこの惑星にはいない。台風の置きみやげでそんなことまで思い出すとは思わなかったのだが…。

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