谷中に来たらなんと言っても「谷中銀座」でしょう。“貸し原っぱ”から2〜3分ぶらぶらすれば到着。各種メディアにはだいぶ以前から取り上げられているので周知の向きも多いところですが、簡単に説明しますと、JR日暮里駅西口・地下鉄千代田線千駄木駅(道灌山ロ)より徒歩3分のところにある、全長150Mほどのいわゆる商店街です。すでにメディア慣れしているような、肉屋・惣菜屋さんなどは取材記事を店頭に掲げ、名物を求めて長蛇の列はいつもの景色。もちろん並ぶの大嫌いな僕は素通りです。個人的には朝のうちに売り切れてしまう豆腐屋の豆乳がおすすめかな。写真は商店街の東(日暮里駅側)の入口「夕焼けだんだん」から望む谷中銀座。近くには富士見坂があり、ビルが建ち並ぶ以前は絶好の霊峰ビューポイントだったのです。 
霊園を突っ切る桜並木に囲まれたメインストリートを中央付近まで来た辺り、左手に五重塔跡地とある。ちょっとした広場になってるので花見のベストスポットか。そのまままっすぐ芸大方面へ進んでもいいのだが、面白そうな路地の匂いを嗅ぎ分けながら、なぜか墓地の中にある交番の角を右に折れてみよう。この日は突き当たりを右に曲がってみる。正解! ちょっと歩くと右手の空き地で何かやってる。あとでわかったが空き地は“貸し原っぱ”で「音地祭り」と称して、小さな古本市のような事だったようだ。同時多発的に界隈で「一坪古本市」が開催されているらしい。ここでは他に手作りのパンやら、店主のいない骨董屋やら、そもそもナニ屋かわからぬものまで、小さなスペースながら充実した出店ぶりであった。なにより“貸し原っぱ”というのがいい。“貸しギャラリー”は聞いた事はあるが…。そっか、別に屋根なくてもいいんだ…と妙に腑に落ちて納得。
写真は、ナニ屋かわからぬ系のおネエさんから購入した、ケシゴムハンコ「おんなずもう」。自作の“紙相撲”セットを風に飛ばされぬようセロテープで止めてセッティングしてある傍らで、地味にケシゴム彫ってる姿に惹かれた。実は「ポン豆ヤ」という屋号もちゃんとある。来年の境内アートに誘ってみた、来てくれるといいな。も一つ古本屋のおっちゃんから、つげ義春「旅日記」千円を五百円に値切って購入。年代モノの文庫本でカラーページを含む図版ページが多く、ちょっとエッチな夢日記もなかなか良し。
JR日暮里駅東口改札を出てから左に曲がって直接谷中銀座に…というルートもなくはないが、おすすめはやはり南口から。改札を出て左に曲がって突き当たり、ちゃんと周辺マップサインが設置されているのでまずは現在位置の確認から。脇の緩やかな石段を上るとすぐ左に「SUZUKI RYOKAN」の英文字。昨今外国人の需要が多いこの地域。2名1室だとお一人さま3,500円也。ヘタなビジネスホテルよりかなりお安い料金設定。目の前墓地だし、何かワケ有りかしらと思いつつも、ちょっと利用してみたいかも。何しろ駅から徒歩1分は魅力。
界隈は墓石店が兼業で営む花屋なども立ち並び路地の風景としては申し分無し。突き当たりを左に曲がると天王寺の入口。今月の寺の行事が書き込まれた看板、「仏像彫刻会」が気になる。
さて、そのまま道なりに進めば広大な谷中霊園中央通り。(ここまでついてこれてますか?既に迷った人はGoogleマップ「日暮里駅 南口」で検索してみて)
数年前に初めて個展で訪れた谷中の事があまりにも面白すぎて誰かに伝えたくなり、近しい人たちに思わずメール配信してしまったのが、思えば自分のブログの始まりかもしれない。そうだ、あれは長野オリンピック直前だったのだと記憶する。まだ新幹線が通る以前、信越線の特急「あさま」がそろそろ上野に近づく頃、車窓右手高台にいつものように見えてくる延々と続く墓地の風景。10代後半の頃、大学受験のために初めて上京して以来、何かしらの大都会のイメージを抱きながらその華やぎと喧噪の渦中に滑り込もうとする直前に、必ず目にするその風景は、いつだって高揚感に何かしら水を差すちょっとネガティブな印象として僕の中に刻まれ続けた。
だが、しかし! その高台にひとたび踏み入れて以来、なんと墓場の楽しきことか。日暮里駅南口の高架脇の石段を上り始めればお線香の香りとともにそこは“やねせん”ワンダーランドの入口となる。4月ともなれば「谷中霊園」中央コンコースではところ狭しと花見の酒宴が開かれるというから驚きだ。ゲゲゲソングでも鼻歌まじり歌いながら、個展根津デビューを記念して明日から数日“やねせん”特集といきますか。
2007より制作開始の「平成絵空事百珍」シリーズ001〜010(樹脂凸版・リトグラフ)にちょっとムラムラっときて彫ってしまった木版画の小品や銅版画など交えて。
5月5日(火)〜5月24日(日)11:00am〜7:00pm(月曜定休)
リブレ◎東京都文京区根津2-29-4
tel:03-3827-1925
*5/5は在廊予定、折しも根津神社つつじ祭りは5/6までなそうな。

いくつかあった今年の注目の一つは、なんといってもチョウ・スオクさん率いる韓国舞踏の皆さんですね。開催が迫る中、余裕のないなかでのオファーでしたが急遽出演が決定。韓国の芸能は以前から興味があったけど、生で見せてもらうのは今回が初めて。舞いも素晴らしかったが楽師の皆さんもただ者ではない。2002サッカーワールドカップ開幕式でも演奏され、世界各国でも公演されている方々。アジアの最東端に伝わった禅の寺で、踊り奏でるものたちの民族衣裳は不思議なコントラストを醸し、迦陵頻伽も浄土界から共鳴しそうな勢い。さてその夜、境内アート名物「禅寺大懇親会」では異国の鳴りモノが場を席巻し、酔いがまわったモノツクリ衆生らは皆トランス状態に陥り、ひたすら踊りまくったとサ。*告知してありました「境内アート選抜展」の展示風景はこちらのサイトでご覧いただけます。

4月18・19日、春の恒例「境内アート」。北信濃小布施、曹洞宗陽光山玄照寺にて、本年も桜舞う中、盛大に催されました。秋の「アート&クラフトフェアおぶせ」と合体する形で、例年の苗市に骨董市も加え、展示エリアも参道〜境内〜どんぐり千年の森まで拡大しての開催です。
参加者も年々増え、今年はアート部門40組・クラフト部門70組という内訳。僕の担当のアート部門では恒例のエセ茶人による薄茶の席に加え、今回初めてのこちらは本物のお煎茶の社中の皆さんによるお手前も体験できました。また現役美大生の参加もめだち、昨年に引き続き野焼きワークショップも好評。さらに一般来場者+出展作家の投票による「境内アート選抜展」(おぶせミュージアム)も20〜28日まで、これまでの境内アートの紹介も兼ねながら開催されておりますので、是非お運びください。

作品解説・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「如是転生」
この山国に伝わる縁起は遠く7千キロ以上も離れた天竺・毘舎離国から始まります。何故に信州とインド?と言われても昔話とはそう言うもの。月に行ったり、海に潜ったり、タイムスリップする話に比べたら、かなり現実的な方かもしれません。もっとも本編にも月や竜宮は登場しますけど。
そのまさに“月”のような大きな蓋で信心の心を閉ざした月蓋長者という大富豪の娘“如是姫”に降り掛かる悲劇が事の発端。大林精舎にてまだ人として生きていた釈迦を頼り、阿弥陀如来の加護を得て姫と国中の人々をが救われた後、改心して贅沢にも釈迦・阿弥陀の両者の共同作業で造ってもらったのが、秘仏・善光寺如来という訳です。
その月蓋長者、仏教世界の大技「輪廻転生」により後に百済の聖明王、そして更には善光寺の名の由来となった本田善光となって生まれ変わり、善光寺如来がこの山国に移っていく話を展開していくわけだから、やはりタイムスリップの要素も十分と言うところでしょうか。結局壮大なお話には間違いなさそうです。

作品解説・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「応化利生」
昔、信濃の国、小県の里に心が貧しい老婆がいました。ある日、軒下に布を干していると、どこからか牛が一頭やってきて、その角に布を引っかけて走り去ってしまいました…とは有名な説話「牛に引かれて善光寺参り」の一節。江戸時代、善光寺信仰と共に広く全国に知られることとなるこのお話の中で、その後老婆は牛が観音菩薩の化身であることに気付き、菩提の心を起こして信心し、やがて極楽往生を遂げます。
仏教ではまず真理そのものとしての如来が存在し、その真理を人々に教え解く菩薩、そしてそれでも救われない者たちのためには憤怒の形相をもってあたる明王までが控え、これら三様全てが仏の顕われ方であると言う考え方があるようです。このように世界の他の宗教では考えられないほどの救済キャラの豊富さを誇りますが、中でも件の老婆に手を差しのべた観音菩薩はさらに全ての衆生を救わんと、その変身ぶりはまさに多彩。救うべき相手の性格や考え方、社会的地位などにも細やかに対応して事にあたる姿勢は、誰一人も洩らさず救わんとする覚悟の顕われとも言えるでしょう。
「応化利生」…仏や菩薩が衆生を救うためにいろいろに姿を変えて出現し、利益を与えること。となれば草木、虫魚、動物に至るまで、我々は絶えず救いの芽に囲まれている生きているということか。にもかかわらず日々さして褒められものしない素行をくり返す我が身に反省しきり。

作品解説・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「花回向」
古来より7777枚あるといわれている参道の石畳を踏みしめて、たどり着いた本堂前で出迎えてくれるのは、大香炉の上で少々恐ろしげな顔で睨みをきかす狛犬。ご利益があるとはいえ終日お香の煙に燻されてはこの表情も致し方無し。数え年で7年に一度、とりおこなわれる「善光寺前立本尊御開帳」の期間中、松代町から奉納される「回向柱」が、この大香炉の直前に立てられます。回向柱には前立御本尊の右の御手に結ばれた金糸が善の綱となって結ばれ、柱に触れる人々に仏の慈悲を伝えてくれます。
この有り難い結縁のシステム、実は7年待たずとも「戒壇巡り」として常時用意されています。本堂内々陣の奥より、瑠璃壇床下へと続く回廊。ひとたびそこに足を踏み入れれば、現世ではおよそ体験でき得ないような“真の闇”と向き合うこととなります。回廊中程に懸かる御本尊様とつながれた極楽の錠前に触れることで、秘仏「善光寺如来」と結縁を果たします。コの字型に一周してくるだけの道程ですが、永久の冥界を巡るが如きの疑似体験。回廊に射し込む出口の光を見つければ現世に戻ったほどの喜び。
御開帳は春遅い信州の花の季節と重なります。本堂東に広がる城山公園は桜の名所。“闇と華”を目と鼻の先で体感できるのも、ここ善光寺の魅力かもしれません。

