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境内アートおぶせ report2

いくつかあった今年の注目の一つは、なんといってもチョウ・スオクさん率いる韓国舞踏の皆さんですね。開催が迫る中、余裕のないなかでのオファーでしたが急遽出演が決定。韓国の芸能は以前から興味があったけど、生で見せてもらうのは今回が初めて。舞いも素晴らしかったが楽師の皆さんもただ者ではない。2002サッカーワールドカップ開幕式でも演奏され、世界各国でも公演されている方々。アジアの最東端に伝わった禅の寺で、踊り奏でるものたちの民族衣裳は不思議なコントラストを醸し、迦陵頻伽も浄土界から共鳴しそうな勢い。さてその夜、境内アート名物「禅寺大懇親会」では異国の鳴りモノが場を席巻し、酔いがまわったモノツクリ衆生らは皆トランス状態に陥り、ひたすら踊りまくったとサ。*告知してありました「境内アート選抜展」の展示風景はこちらのサイトでご覧いただけます。

境内アートおぶせ

4月18・19日、春の恒例「境内アート」。北信濃小布施、曹洞宗陽光山玄照寺にて、本年も桜舞う中、盛大に催されました。秋の「アート&クラフトフェアおぶせ」と合体する形で、例年の苗市に骨董市も加え、展示エリアも参道〜境内〜どんぐり千年の森まで拡大しての開催です。
参加者も年々増え、今年はアート部門40組・クラフト部門70組という内訳。僕の担当のアート部門では恒例のエセ茶人による薄茶の席に加え、今回初めてのこちらは本物のお煎茶の社中の皆さんによるお手前も体験できました。また現役美大生の参加もめだち、昨年に引き続き野焼きワークショップも好評。さらに一般来場者+出展作家の投票による「境内アート選抜展」(おぶせミュージアム)も20〜28日まで、これまでの境内アートの紹介も兼ねながら開催されておりますので、是非お運びください。
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作品解説・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「如是転生」
 この山国に伝わる縁起は遠く7千キロ以上も離れた天竺・毘舎離国から始まります。何故に信州とインド?と言われても昔話とはそう言うもの。月に行ったり、海に潜ったり、タイムスリップする話に比べたら、かなり現実的な方かもしれません。もっとも本編にも月や竜宮は登場しますけど。
 そのまさに”月”のような大きな蓋で信心の心を閉ざした月蓋長者という大富豪の娘”如是姫”に降り掛かる悲劇が事の発端。大林精舎にてまだ人として生きていた釈迦を頼り、阿弥陀如来の加護を得て姫と国中の人々をが救われた後、改心して贅沢にも釈迦・阿弥陀の両者の共同作業で造ってもらったのが、秘仏・善光寺如来という訳です。
その月蓋長者、仏教世界の大技「輪廻転生」により後に百済の聖明王、そして更には善光寺の名の由来となった本田善光となって生まれ変わり、善光寺如来がこの山国に移っていく話を展開していくわけだから、やはりタイムスリップの要素も十分と言うところでしょうか。結局壮大なお話には間違いなさそうです。
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作品解説・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「応化利生」
 昔、信濃の国、小県の里に心が貧しい老婆がいました。ある日、軒下に布を干していると、どこからか牛が一頭やってきて、その角に布を引っかけて走り去ってしまいました…とは有名な説話「牛に引かれて善光寺参り」の一節。江戸時代、善光寺信仰と共に広く全国に知られることとなるこのお話の中で、その後老婆は牛が観音菩薩の化身であることに気付き、菩提の心を起こして信心し、やがて極楽往生を遂げます。
 仏教ではまず真理そのものとしての如来が存在し、その真理を人々に教え解く菩薩、そしてそれでも救われない者たちのためには憤怒の形相をもってあたる明王までが控え、これら三様全てが仏の顕われ方であると言う考え方があるようです。このように世界の他の宗教では考えられないほどの救済キャラの豊富さを誇りますが、中でも件の老婆に手を差しのべた観音菩薩はさらに全ての衆生を救わんと、その変身ぶりはまさに多彩。救うべき相手の性格や考え方、社会的地位などにも細やかに対応して事にあたる姿勢は、誰一人も洩らさず救わんとする覚悟の顕われとも言えるでしょう。
 「応化利生」…仏や菩薩が衆生を救うためにいろいろに姿を変えて出現し、利益を与えること。となれば草木、虫魚、動物に至るまで、我々は絶えず救いの芽に囲まれている生きているということか。にもかかわらず日々さして褒められものしない素行をくり返す我が身に反省しきり。
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作品解説・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「花回向」
 古来より7777枚あるといわれている参道の石畳を踏みしめて、たどり着いた本堂前で出迎えてくれるのは、大香炉の上で少々恐ろしげな顔で睨みをきかす狛犬。ご利益があるとはいえ終日お香の煙に燻されてはこの表情も致し方無し。数え年で7年に一度、とりおこなわれる「善光寺前立本尊御開帳」の期間中、松代町から奉納される「回向柱」が、この大香炉の直前に立てられます。回向柱には前立御本尊の右の御手に結ばれた金糸が善の綱となって結ばれ、柱に触れる人々に仏の慈悲を伝えてくれます。
 この有り難い結縁のシステム、実は7年待たずとも「戒壇巡り」として常時用意されています。本堂内々陣の奥より、瑠璃壇床下へと続く回廊。ひとたびそこに足を踏み入れれば、現世ではおよそ体験でき得ないような”真の闇”と向き合うこととなります。回廊中程に懸かる御本尊様とつながれた極楽の錠前に触れることで、秘仏「善光寺如来」と結縁を果たします。コの字型に一周してくるだけの道程ですが、永久の冥界を巡るが如きの疑似体験。回廊に射し込む出口の光を見つければ現世に戻ったほどの喜び。
 御開帳は春遅い信州の花の季節と重なります。本堂東に広がる城山公園は桜の名所。”闇と華”を目と鼻の先で体感できるのも、ここ善光寺の魅力かもしれません。
作品解説・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「四門四海」
 古えより、四門四額と称して、東門を定額山・善光寺、南門を南命山・無量寿寺、北門を北空山・雲上寺、西門を不捨山・浄土寺と伝わります。このように仏教では「四」という数字は重要な意味をもって使われることが多いようで、四天王などもその一つ。仏教世界の四方(東西南北)にその守護神として配置されますが、そんな一つの数字からも深遠なる宇宙観を感じさせてくれます。
 その世界の中心にそびえるとされる”須弥山”と、遠く天竺より仏教が伝わったアジアの最東端の島国のイメージを重ねてみました。
 縁起によれば善光寺秘仏の体を成すのは、はるか海中の竜宮より釈迦の十大弟子の一人”目連”が貰い受けたとされる「閻浮壇金」という金属。”エンブダゴン”と発音し、同じく海と縁の深いアトランティス伝説に登場する幻の金属”オリハルコン”を連想させて面白い。龍もまた”阿闍梨池伝説”や”飛柱記”などに登場する善光寺に縁ある霊獣として伝説の中にたびたび登場し、善光寺不思議ワールドを牽引するキャラクターとして申し分なし。
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